熊本地震の被災地で市役所庁舎や病院など防災拠点施設が損壊し、使用不可能になる事態が発生している。南海トラフ地震の発生が懸念される東三河にとって、他人事ではない建物の耐震。豊橋市の防災担当者は「地震で生き延びるため、まずは建物の耐震化、室内家具の固定を改めて確認してほしい」と訴えている。
（取材班）

　最大震度７が発生した場合、豊橋市では建物５万６５９２棟が全壊し、３０４７人が亡くなると想定する。東三河各市でも甚大な被害が予測されている。
　豊橋市内の耐震化については、２０１３（平成２５）年時点で住宅の８８．８％が完了。国が定める２０年までに耐震化率９５％の目標に向け、各市も無料の住宅耐震診断の実施や、耐震改修工事費の助成といった支援を用意している。
　強い余震が続く熊本県では、耐震化を完了していた小学校の体育館が破損し、避難者を移動する事態も生じている。
【繰り返す揺れを懸念】
　東三河５市では、豊橋市が開設する第１・２指定避難所計１６５施設など、ほとんどの市の避難所が国の耐震改修促進法で定められている耐震基準をすべてクリア。新城市は、学校以外の耐震化が済んでいないため、避難所の見直しを考えている。
　ただ、「今回の熊本のように震度６以上の揺れが何度も来た場合は正直分からない」（豊川市防災担当者）や「揺れの周期によっては耐えられるか分からない」（蒲郡市防災担当者）という声もある。
　さらに、被災地では防災拠点となる市役所などの庁舎が損壊し、使用できないケースが出ている。豊橋、豊川、田原の３市は耐震化が完了。一方で、蒲郡市は避難施設の耐震化を優先し、市役所本館と駐車場棟のみが済んでいる。新庁舎建設を控える新城市は、本庁舎の耐震化を最低限にとどめてあり、倒壊はしないが、地震後は使用できないという。このため東庁舎に災害対策本部を置く。
　政府の地震調査研究推進本部によると、熊本地震を起こしたとされる布田川断層帯について、マグニチュード（Ｍ）７の地震が３０年以内に発生する確率は最大０．９％、布田川断層帯を含む九州中部の区域ではＭ６．８以上の発生確率が１８～２７％と評価していた。南海トラフに関しては、Ｍ８～９クラスの地震が発生する確率は７０％程度とこれを大きく上回っている。