ユニチカが豊橋事業所（豊橋市曙町）の土地を豊橋市に返還せず売却したことにより、市は少なくとも６３億円の損害を被ったとして、周辺住民らが２日、ユニチカに対して６３億円の支払い請求を行う必要な措置を講じるよう佐原光一市長に求める住民監査請求をした。
（中村晋也）

　請求を起こしたのは、市民団体「ユニチカ跡地の返還を求める市民の会」の鈴木正廣事務局長ら６９５人。代表者がこの日午後、市役所の監査委員室を訪れた。
　ユニチカは昨年９月、閉鎖していた同事業所の跡地約２７万平方メートルを６３億円で大手住宅建設の積水ハウスに売却した。
　豊橋事業所を市が誘致した１９５１（昭和２６）年に締結した契約書には、「大日本紡績（ユニチカの前身）は将来敷地の内で使用する計画を放棄した部分は、これを豊橋市に返還する」が記載された。
　市は、国から払い下げられた土地を無償で日紡に提供。所有権は同社に移転された。
　６６年には契約書の「将来」を無期限、「計画を放棄した…」は「日紡自ら市に対して意思表示した場合に限る」を確認した疑義事項協議書も取り交わした。
　記者会見した住民らは、契約書などを説明。その上で、一昨年１０月９日にユニチカが「平成２７年３月末までに豊橋事業所全体を閉鎖」や売却などを記した文書を市に提出、同２９日には社長が佐原市長に説明した二つの点に触れ、「この段階で市に放棄を意思表示。返還を要求しなければならなかった」と指摘した。
　住民らは、土地が事業所として使われた後の撤退も「使用計画の放棄にあたる」との認識も示した。
　これに対し、佐原市長ら市側はこれまでに、「使用計画を放棄した場合」に該当し、業務に使われた後の撤退は使用計画の放棄にあたらない考えを示しており、解釈の違いが鮮明になった。
　また、住民らは「（一昨年）１０月９日には事業所の閉鎖、売却が分かったのだから、議会や市民に伝えるべきだった」と主張した。
　佐原市長は、１日の定例会見で「１０月９日の文書は正副議長に出した。広報紙に出す案件ではない」と述べている。