国土交通省は近年の全国的なゲリラ豪雨による災害を受け、東三河を流れる豊川（とよがわ）水系の新たな洪水浸水想定区域を発表した。豊川市を中心に区域が広がり、地元の自治体も対応に追われている。
（由本裕貴）

　これまでは１５０年に一度という「１日あたり３１１ミリ」の降雨量を想定していたが、昨年１１月１９日に完全施行された改正水防法により、想定最大規模として約２倍の「１日あたり約６００ミリ」で想定。これにより、浸水区域が主に豊川放水路から北側の豊川市小坂井、御津地区の一部に拡大した。
　予想される水深は深い場所で５～１０メートル。今回新たに追加された区域では１～５メートルの部分が多い。浸水継続時間は豊川放水路と豊川に挟まれた豊橋市の下五井町や川崎町、清州町、豊川市の佐奈川付近や小坂井町などで最大７２時間（３日間）となっている。
　国交省中部地方整備局豊橋河川事務所は７月１２日に沿川自治体の首長や県、気象庁との会合を設け、「逃げ遅れゼロ」「社会経済被害の最小化」をテーマに協議する。
　しかし、東海地方も梅雨入りし、ちょうどこれから豪雨が発生しやすい季節。豊川市の防災対策課も「まずは対象地区の住民に周知すること。具体的な対策は検討段階で、まだこれから」と急な対応に追われている。ハザードマップや避難ルートなどの早急な見直しが迫られる。
　鬼怒川（茨城）が決壊し、多くの犠牲者が出た昨年９月の「関東・東北豪雨」が記憶に新しい。豊橋河川事務所の関健太郎事務所長は「鬼怒川では水位が堤防の高さをわずか約２０センチ上回って決壊した。その２０センチへの意識が、地域を守ることにつながる」と話している。