乗員・乗客１５人が死亡した長野県軽井沢町での事故など、日本各地で大型バスの事故が相次いでいる。多くの人命を預かるバスの安全が問われる中、東三河の観光バス会社の運行管理体制や事故防止への取り組みに、３回にわたって迫る。
（由本裕貴）

　豊橋市磯辺下地町に本社を置く豊鉄観光バスは４４台のバスを所有し、豊橋、豊川市を発着地とした「ハニット・アゼリアツアー」や貸し切りの団体旅行などを展開する。２月からは東京ディズニーリゾート行きのツアーも控える。
　軽井沢の事故のようなスキー場行きのバスは名古屋駅から運行しているが、ほかのツアーも含めて夜間運転を必要とする際は必ず運転手２人を配置し、経験の浅い若手が高速道路を、ベテランがカーブの多い山道を運転している。また、車中ではなく必ずビジネスホテルの部屋で休養を取ることを義務付けている。
　６０人以上のドライバーが働くが、国土交通省から指定された年２回の健康診断のほか、３年に１回の適性診断、新入社員向けの初任診断、６５歳以上を対象とした適齢診断も徹底。健康診断で運転に支障のない程度の異常があった場合も、診断書の提出を義務付けている。
　今年度、「貸切バス事業者安全性評価認定制度」で最高ランクの三ツ星認定を受けたが、社員への教育・訓練に費用を割く。運行管理者の石川雄太郎さん（５４）は「人命はお金で解決できない。シャンデリア付の豪華なバスの導入より、乗務員の資質向上を優先すべき」と話す。
　４、８、１２月には「事故防止集会」を実施。実際の事故事例を動画や写真で振り返りながら意見交換し、事故撲滅に努める。数日間に分け、出勤頻度の少ないバスガイドらも含めて乗務員全員を参加させている。